2014年9月3日水曜日

福岡伸一さんのの「生物と無生物のあいだ」を読んで、読書感想文を書いた。

福岡伸一さんのの「生物と無生物のあいだ」を読んで、2009年3月、私は次の通り読書感想文を書いた。「生物と無生物のあいだ」の本が、今回見つからなかったので、その表紙を写真にとれない。DNAや遺伝子と関係があるものを探した。そのときふと思いついたのが言霊である。

私は言霊に興味を持ってきた。「生物と無生物のあいだ」=ウィルス=DNA=遺伝子。これらは、言霊とつながるような気がする。それで、20年前に買った、鳥居さんの「言霊」という本の裏表紙を撮りました。写真の「WORD SPRIT」ですね。私は20年前この本を買いましたが、結局読んでいません。私の能力が、言霊を理解するレベルになっていなかったからだと思います。いう読めるようになるのでしょう。

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読書感想文(生物と無生物のあいだ・・・福岡伸一)

<福岡伸一さん>

福岡伸一さんは、1959年9月に東京都で生まれ、京都大学に行き博士課程を卒業し、その後研究員としてアメリカに行き、帰って京都大学の助教授、青山学院の教授をしている、分子生物学者です。

この本は2007年に出版されて、新書大賞とサントリー学芸賞をダブル受賞しました。売れ行きも60万部を突破してベストセラーになったことでも有名です。

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<私の若いとき7年半もいた、懐かしい千葉県松戸市>

私が何故この本を買ったかというと、この本が有名だったこともありますが、本屋の立ち読みで、福岡伸一さんが、私が若い20歳~27歳までいた千葉県松戸独身寮の。そばにいたことがわかったので買いました。

本屋の立ち読みで“エピローグ”を読んだら(“エピローグ”は「おわりに」という意味ですが、「はじめに」とか「おわりに」を読むと、そこに著者のセンスが現れているので、私の本屋や図書館での立ち読みではこういうところから読み始めるのです)、私が独身のときに住んだ「松戸」が出てきたので、懐かしくて、この本も気に入ったのです。

福岡伸一さんのおとうさんが公務員で、福岡伸一さんが小学低学年のとき松戸市に引っ越したそうです。そばの短大が四大になったと書いてありましたが、それは聖徳短大のことだと思います。私もその学園祭に行ったことがあります。私が松戸の独身寮に入ったころ、福岡伸一さんも松戸に引っ越したのだと思ったら、不思議な縁を感じました。福岡伸一さんの住んだ公務員住宅がどこかは分かりませんが、書いてある話の内容からして私の独身寮から近いところにあったと思います。

そして、この本の“エピローグ”で、この人の熱心さと、熱心さのもつ残酷さも分かりました。そして、この残酷さをさらっと書くところに、この人の諦念も理解できました。

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<DNA(D=デキシリボ、N=核、A=酸)、生命>

生物と無生物の間というのは、ウィルス、言い換えるとDNAのことです。ガンもDNA異常なのだそうです。ウィルスは遺伝子の塊なので、自分を複製する情報は持っていますが、自分だけでは生きていけない。何かに寄生することが必要になります。

だから「ウィルスは生物なのか、無生物なのか」という問いも発生するし、この本のタイトルも生まれました。
ウィルスについて、福岡伸一さんは次のように書いています。「ウィルスを初めて電子顕微鏡下で捉えた科学者たちは不思議な感慨に包まれたに違いない。ウィルスはこれまで知っていたどのような病原体とも異なって、非常に整った風貌をしていたからである。・・・ウィルスを混じり物のない純粋な状態にまで精製し、特殊な条件で濃縮すると、『結晶化』することができる。これはウェットで不定形の細胞では考えられないことである。」

この本には、魅力的な人が沢山でてきます。どの人も、生命というものにつかれたように研究にのめりこんでいった、天才たちでしょう。この人たちを追うことが、この本の概略・構成を知ることにもつながるので、出てくる天才的研究者を書きます。そして最後に、私の全体を読んだ感想も書きたいと思います。

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<オズワルド・エイブリー(1877~1955)>

この人が、福岡伸一さんが初めてアメリカに行ったときのニューヨーク・マンハッタンの研究所である、ロックフェラー研究所で、その昔タバコ・モザイク病を追い、遺伝子はDNA(ウィルス)だと初めて言った人です。1944年に論文を発表しました。この研究については不純物がひそんでいる(コンタミネーション)のではないかという疑問が同僚から出され、その可能性を打ち消すための実験に、エイブリーは苦労しています。

福岡伸一さんはこう言っています。「彼の実験データが示している事実は、遺伝子がたんぱく質であるという予測とは違っていた。エイブリーはS型菌からさまざまな物質を取り出し、どれがR型菌をS型菌に変化させるのかしらみつぶしに検討していった。

その結果、残った候補は、S型菌体に含まれている、酸性の物質、核酸、すなわちDNAであった。核酸は高分子ではあるけれど、たった4つの要素だけからなっているある意味で単純な物質だった。・・・当時、情報のコード(暗号)化についてそのように考えられる研究者は、少なくとも生物学者にはいなかった。・・・遺伝子の本体はDNAである」

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<アーウイン・シャルガフ(1905~2002)>

この人が「シャルガフのパズル」を言ったときは、エイブリーと同じコロンビア大学のニューヨーク・マンハッタンの医学研究所にいました。「どのような種類のDNAも、DNAを構成する4つの文字(塩基)、『A(アデニン)』『T(チミン)』『C(シトシン)』『Z(グアニン)』について『A』の数=『T』の数、『C』の数=『Z』の数である」これが「シャルガフのパズル」です。

この「シャルガフのパズル」が1942年に発表され、それが「A」と「G」、「C」と「G」が相補性をもつ2重らせん構造であるDNAの、構造解明につながることになりました。

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<キャリー・マリス(1944~   )>

マリスの性格を知るには、彼の評判が最も分かりやすい。「サーファー」「LSDをやっている」「あらゆる職場で女性問題を起こした」「講演会で好き勝手な話をして降壇させられた」・・・。全部、本当だそうです。つまり自由人だと思います。

彼が、ノーベル化学賞を貰うことにつながるPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション=ポリメラーゼ連鎖反応)を作った、1983年の彼のヒラメキが凄くて、PCRの存在が、DNAの研究を進ませたそうです。

その理屈をこの本で説明しているのですが、何回読んでも、私が理解できないところでした。この福岡伸一さんの説明は上手で、私もたいていのことを理解できたような気になれたのですが、ここだけは、理解できなかった。何か私の仮定不足があって(本当は簡単なことだと思いますが)、理解できなかったのでしょう。

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<ジェームズ・ワトソン(1928~  )、フランシス・クリック(1916~2004)、モーリス・ウィルキンズ(1917~2004?)、ロザリオ・フランクリン(1920~1958)>

前の3人は、DNAの発見で、1962年のノーベル・生理医学賞を貰った人です。最後の一人の女性は、ウィルキンズのチームにいた女性で、3人がノーベル賞をもらうキッカケを作ったX線結晶学研究者です。

3人がノーベル賞をもらったときは、彼女はX線を浴びすぎたせいか、ガンでなくなっていました。彼女がDNAをX線解析しその内容を、1952年、研究への助成金を続けてもらうため、英国医学研究機構の年次報告書に出しました。年次報告書は非公開ですが、それを3人のノーベル賞をもらった人が、いろいろな背景があって見たのです。

フランクリンの研究結果に触発された、ワトソンとクリックは(フランクリンと同じロンドンのケンブリッジの研究所にいましたが)、DNAの構造に関し、わずか1000文字の論文を雑誌「ネイチャー」に掲載しました。それが、ノーベル賞につながったのです。

ウィルキンズとフランクリンはロンドン大学で同じ研究室にいて、ウィルキンズがフランクリンの上司だったそうです。

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<エルビン・シュレディンガー(1887~1961)>

1926年に提出した論文、量子力学のシュレディンガーの波動方程式で有名な、シュレディンガーです。シュレディンガーは1933年にノーベル・物理学賞をもらっています。

DNAでノーベル賞をもらった3人とも、シュレディンガーが1944年(奇しくもエイブリーが、遺伝子はDNAであるとした研究を発表した年です)に書いた本「what is life」(生命とは何か)に影響を受けたと言っています。

シュレディンガーがノーベル・物理学賞を貰った1933年頃には、シュレディンガーは理論物理の世界を離れ、最も複雑で不可思議な現象「生命現象」に向かうべきだとして、思索を重ね、それが「what is life」に結実しました。

その中で、シュレディンガーは2つのことを言っています。1つ目は「遺伝子の本体はおそらく、非周期結晶ではないか」ということ。これはDNAの発見で証明されました。2つ目は「何故、原子はそんなに小さいのか」。言い換えれば、生物は、何故原子に比べて、そんなに大きいのか。それを、「ブラウン運動」、「拡散」、「熱力学の法則」等で、この本は説明しています。

また言い換えれば何故、乱雑さから秩序が生まれるのか、を説明しています。それは、生物が原子より圧倒的に大きいので、生物では原子の統計法則が成立するからと言っています。この理論は、確かに私たちの知的興奮を呼びます。

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<ルドルフ・シェーンハイマー( ~1944)>

生命が持つ特徴として、動的平衡という考え方を確立した人です。福岡伸一さんは、動的平衡を砂浜にみたてて説明しています。海に洗われている砂浜は、翌日もその翌日もその翌日も形は変わっていませんが、砂浜の構成要素である砂は、数日で全部入れ替わっているそうです。

生命もこの動的平衡を保つ砂浜と同じ特徴を持っているといいます。生命は、このアナロジーでの砂浜、そしてこのアナロジーでの砂は、細胞、それを構成するたんぱく質、たんぱく質を構成するアミノ酸・・・です。

シェーンハイマーが何故、これを分かったかというと、同位元素を食べさせた“ねずみ”がどうなったかを調べたからです。同位元素というのは、他の元素と性質は同じですが、(中性子の数が違うので)重量が少し異なる、自然界に僅かに存在するものです。

たんぱく質やそれを構成するアミノ酸に含まれる、窒素等の同位元素をたんぱく質の標識として人工的に作って、たんぱく質にまぜ、それを一定期間だけ食べた“ねずみ”を調べた結果、“ねずみ”を構成するたんぱく質は、時間とともに入れ替わっていく。形は変わらないけれど(形の変わらない、成長した“ねずみ”を使ったそうです)、その構成要素のたんぱく質は体中で少しずつ入れ替わっていく。

これはエントロピーの増大(極限は熱的平衡=安定の状態=死)にさらされている生命が、自分を維持するため、死の前に自分(細胞)を壊し、そして再生しエントロピーを低くし、秩序を維持している姿だと言います。これを理解したシェーンハイマーは天才であったと思いますが、1944年自殺しました。

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<ジョージ・バラーディ(  )>

福岡伸一さんのアメリカの恩師で、彼がその研究についたジョージ・シ-リーの、そのまた師がジョージ・バラーディです。ロックフェラー研究所で研究をしていましたが、1974年にノーベル・医学生理学賞を受賞しました。

ジョージ・バラーディは、前述のシェーンハイマーが標識として使った同位元素を、さらに発展させて、放射性同位元素を使いました。このとき実験に使ったのが、消化酵素をつくる膵臓でした。

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<アメリカでの福岡さんの苦闘と、その結果>
 
このジョージ・バラーディの実験を踏襲したのが、福岡伸一さんのアメリカでの恩師、シーリーであり、福岡伸一さんです。全部で16章あるこの本の11章以降6章は、バラーディが考えたことと、シーリー、福岡伸一さんの研究の苦闘が書いてあります。

その説明では本物のジグソーパズルが出てきます。さらに立体で複雑なジグソーパズルの要素がたんぱく質で、パズル全体が生命だと言っています(生物の世界でジグソーパズルというのは福岡伸一さんの仮説だと思いますが)。また、ES細胞やブリオンも出てきます。

そして、福岡伸一さんの研究(ジョージ・バラーディが言ったことを踏まえた研究)で、福岡伸一さんの仮説(それは科学者の常識の延長にあるのですが)が、実験の結果、破れる話が出てきます。それは、遺伝子的な操作で、膵臓にとって重要な物質を、作ることができない胚をもった“ねずみ”を作りました。が、その“ねずみ”は、何事もなかったかのように成長を続け、大きくなったそうです。

つまり、生命を維持するために重要な物質を作れなければ、遺伝子はその代替物質を作る能力も持っていたのです。それを予想できなかった福岡伸一さんは、実験結果に驚きました。そのとき、「生命」の凄さも思います。

福岡伸一さんや、この本で紹介される他の研究者を見て、研究者の研究での執拗さを思い、また研究が成功するも失敗するも神まかせのところがあると思いました。そこでは福岡伸一さんの、あるいは一般の研究者の諦念も理解できるなとも思います。

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<アンサング・ヒーロ>

この「生物と無生物のあいだ」で福岡伸一さんは、DNAのアンサング・ヒーロ(an unsung hero=歌われないヒーロ=縁の下の力持ち)が、誰だったかを言っています。それらの人は、ノーベル賞を貰えなかった、オズワルド・エイブリーであり、ロザリオ・フランクリンであり、ルドルフ・シェーンハイマーでした。何故、そういうことが起こるのかも説明しています。

アンサング・ヒーロには、同じノーベル賞を貰えなかったアーウイン・シャルガフ、あるいは分子生物学の分野ではノーベル賞を貰えなかったエルビン・シュレディンガーも入るかも知れません。

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<生命、その不可思議なもの>

また、「生物と無生物のあいだ」の「はじめに」には、全体に凄いことが書いてあると思います。私がもっとも唸ったのは「分子生物学的な生命観に立つと、生命体とはミクロなパーツからなる精巧なプラモデル、すなわち分子機械に過ぎないといえる。デカルトが考えた機械論的生命観の究極的な姿である」というシュレディンガーの考えです。シュレディンガーは、良い意味の、そして質の高い西洋科学の人だったと思いました。

この本は、私にとって難しかったし、内容も沢山ありました。しかし、福岡伸一さんが説明上手であること、ロマンティストであることも分かります。こんな難しい本が60万部も売れた日本も、捨てたものではないなと、私は思いました。

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